2024年11月に施行された、いわゆる「フリーランス新法」では、様々な義務を発注事業者に課しています。すでにフリーランスと契約している会社、これからフリーランスと契約しようとしている会社はどのような注意が必要なのでしょうか。
本記事ではフリーランス新法で事業者にどのような対応が必要か解説いたします。
対応漏れを防ぐためにも是非確認してください。
フリーランス新法とは
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)とは、フリーランスが受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講じることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
フリーランス新法とも略されるのが一般的で、その他に「フリーランス・事業者間取引適正化等法」「フリーランス法」「フリーランス保護法」などの呼ばれ方があります。
フリーランス新法制定の理由
どうしてフリーランス新法は制定されたのでしょうか。
フリーランス人口が増加している
2020年に内閣官房が行った調査によると、フリーランスとして働く人の数は462万人と試算されています。これを受けて内閣府の日本経済2021-2022では「自営業主のうち従業員を雇っていない者について2017年以降女性を中心に、様々な年齢層において、緩やかな増加傾向がみられる。」としています。働き方の多様化や副業が盛んになったことに加えてコロナ禍がこれを後押ししたとみられています。
フリーランスの就業環境の整備の必要性
フリーランス人口の増加によって、トラブルも多く増えてきました。
2024年に日本労働組合総連合会が実施した「フリーランスとして働く人の意識・実態調査」では、46.6%のフリーランスが「仕事上でトラブルの経験がある」と回答しています。その内容として次のものが挙げられます。
- 不当に低い報酬額の決定
- 報酬の支払いの遅延
- 一方的な仕事の取消し
- 報酬の不払い・過少払い
- 一方的な仕事内容の変更
フリーランス新法制定の理由は、増加するフリーランスをトラブルから保護するためです。
フリーランス新法における委託者の義務
フリーランス新法はフリーランス(特定受託事業者)に対して、次の義務を課しています。
- 書面などによる取引条件の明示
- 報酬支払期日の設定・期日内の支払い
- 7つの禁止行為
- 募集情報の的確表示
- 育児介護等と業務の両立に対する配慮
- ハラスメント対策に関する体制整備
- 中途解除等の事前予告・理由開示
書面などによる取引条件の明示
フリーランス新法では、業務委託者がフリーランスに業務を委託した場合に、書面などによって取引条件を明示することを義務づけています(フリーランス新法第3条)。
取引条件として明示する事項は9つです。
- 仕事の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 業務委託事業者・フリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 給付を受領する日/役務の提供を受ける日
- 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
- (検査をする場合)検査完了日
- (現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項
明示は口頭ではなく書面のほか電磁的方法で行う必要があります。
報酬支払期日の設定・期日内の支払い
フリーランス新法では、報酬の支払期日の設定と、期日内の支払いを義務付けています(フリーランス新法第4条)。
支払期日については下請法と同様に60日以内のできるかぎり短い期間内を定めることが規定されています。
報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。
再委託の場合には30日以内とする例外もあるので注意しましょう。
7つの禁止行為
フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には次のことが禁止されます(フリーランス新法第5条)。
- フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに受領を拒否すること
- フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに報酬を一方的に減額すること
- フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに給付したものを一方的に返品するこ
- 類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること(いわゆる買いたたき)
- 特定受託事業者の給付の内容を均質する・改善を図るなどの正当な理由がないのに、物を強制して購入させたり役務を強制して利用させること
- 金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
- 不当に給付内容の変更したり、やり直しさせたりすること
募集情報の的確表示
広告などによりフリーランスの募集情報を提供するときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保つ義務があります(フリーランス新法第12条)。
育児介護等と業務の両立に対する配慮
フリーランスに対して6か月以上業務を委託している場合、フリーランスからの申出があると、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるように必要な配慮をする義務があります(フリーランス新法第13条)6ヶ月以上業務を委託していなくても、配慮するように努力する義務も併せて規定されています。
ハラスメント対策に関する体制整備
業務委託者は、ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応のための体制整備などの必要な措置を講じる義務があります(第14条)。
中途解除等の事前予告・理由開示
フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合は少なくとも30日前までに、書面・FAX・電子メール等によってその旨を予告しなければなりません(フリーランス新法第16条)
事前予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由の開示を請求した場合、遅滞なく開示しなければならないとしています。
フリーランス新法の内容に違反した場合のペナルティ
以上の内容に違反した場合、業務委託側に次のようなペナルティがあります。
勧告・命令・氏名公表
厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が、募集情報の的確表示・ハラスメント体制の整備・解除予告などを行わない場合には、その違反を是正し、又は防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができます(フリーランス新法第18条)。
当該勧告についての措置をとらなかったときは、措置をとるべきことを命令でき、命令をしたこと・措置をとらなかったことを公表できることも定めています(フリーランス新法第19条)。
報告をさせる立ち入り検査をする
厚生労働大臣は、勧告や命令に必要である場合には、事業者に報告をさせたり、立ち入り検査ができる旨が規定されています(フリーランス新法第20条)。
刑事罰
これらの命令や報告や立ち入り検査を拒んだ場合には、刑事罰が規定されています。
まとめ
本記事では、フリーランス新法について解説しました。
フリーランス保護のために事業者に刑事罰つきの義務を課しているもので、個々の契約やフリーランスへの義務や禁止行為を把握するほか、フリーランスと契約する際の書面等の作成や、ハラスメント対策の体制整備などが必要となります。
個々の契約内容に問題ないかはもちろん、書面の内に漏れがないかや、ハラスメント対策の体制整備は十分かといったことについて、契約に詳しい行政書士に相談しておくことをおすすめします。