取引において様々な種類の書面を作成することがあります。もっとも典型的なものは契約書ですが、たとえば雇用契約、請負契約、夫婦間において、「誓約書」という書類を差し入れることがあります。

契約書と誓約書はどのような違いがあるのでしょうか。また、それぞれの強制力や証拠能力などの法的効力に違いがあるのでしょうか。
お客様より非常に多くの質問を頂いておりますので、コラムにしてみました。

本記事では契約書と誓約書の違いや、その法的効力について解説します。

契約書とは

契約書とは、当事者で契約した内容をまとめた書面をいいます。

契約の多くは当事者の申込と承諾の意思表示が合致すれば成立します。たとえば、売買契約では「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」とされており(民法第555条)特に契約書は必要とされていません。しかし、売買契約を巡って争いになった場合に、裁判で主張するためには証拠が必要です。このような場合に、契約書は売買契約の内容について証拠として利用ができます。そのため、多くの契約で契約書が作成されます。

なお、例外的に保証人になる場合には書面が必要となるように(民法第446条第2項)、契約をする際に書面の作成が必要となる契約もあるので注意しましょう。

誓約書とは

誓約書とは、当事者の一方が他方に対して約束した内容をまとめた書面をいいます。

当事者間で一定の内容を約束することがあります。

たとえば、雇用契約や請負契約において守秘義務を守るように約束したり、夫婦間で以後不倫をしないように約束するなどすることがあります。これに違反したときに法的責任を追求する場合にも、契約書のような書面が必要でそのために作成されるのが誓約書です。

契約書と誓約書の違い

契約書と誓約書はどのような違いがあるのでしょうか。

契約書は書面において双方の権利・義務が記載されているのが通常です。一方で誓約書は契約当事者の一方が他方に対して約束をすることだけが記載されているという違いがあります。そのため、記名押印するのが契約書では当事者双方であるのに対して、誓約書では記名押印は約束をする一方のみとなります。

参考:念書・覚書

類似のものとして念書・覚書というものが挙げられます。

念書とは

念書とは、当事者で約束した内容をまとめたもので、内容としては誓約書と異なりません。インターネットでは法的効力が無いような記載がされていることもありますが、念書の内容が法令などに反せず、内容が真実であると確認されれば、念書の内容が法的効力をもつこともあるので注意しましょう。

覚書

覚書とは、当事者で合意した内容を書面にまとめたものです。

利用されるシーンとしては契約内容についての交渉段階ですでに合意した内容について、あるいは契約後に契約内容を補完するために、覚書という形式で文書が作成されます。契約書や誓約書と内容としては変わりません。

契約書・誓約書の法的効力

契約書・誓約書の法的効力について確認しましょう。

契約書・誓約書の内容の強制力の有無

契約書・誓約書の内容に強制力は認められるのでしょうか。

契約書の内容強制力の有無

契約書に記載されていることはあくまで契約の内容です。そのためその内容が法令で認められるかどうかによります。

契約内容について法的拘束力が認められないものについては、契約書に記載したからといって有効となるものではありません。

法律に反する内容でも、当事者で内容を変更できる任意法規についての定めであれば、契約書に記載した内容に強制力が認められます。

例:

  • 債務整理の通知を受けたときに期限の利益を喪失する
  • 貸金について利息は10%とする
  • 売買代金は月末に支払う

一方で当事者で内容を変更できない強行法規についての定めであれば、たとえ契約書に記載していたとしても無効であり、その内容に強制力はありません。

例:

  • 貸金契約について利息は50%とする(利息制限法・出資法に違反する)
  • 残業しても残業代は支払わない(労働基準法に違反する)
  • 請負代金の支払いは180日後とする(下請法に違反する)

契約書・誓約書の内容を強制するための手続き

実際に契約書・誓約書に違反することを当事者がした場合に、契約書・誓約書に記載されている内容を守らせるためにはどのような手続きが行われるのでしょうか。

請求をする

違反をした人に対して請求をします。

たとえば、一定の行為について金銭賠償をする旨の規定を設けていた場合には、その規定に基づいた相手に対して支払いを求めます。

裁判を起こす

相手が任意にこれに応じない場合には、相手に対して裁判を起こします。

裁判によって請求内容が認められる判決を下してもらいますが、判決に至るまでに和解という形で支払い内容が決まることがほとんどです。
契約書、誓約書は訴訟上の証拠として有用なものとなります。
裁判のための証拠がしっかり残っているということに付随する効果として、契約書、誓約書については、当事者が記載事項を守ろうとする働き(訴訟される負ける可能性があるため)があります。

強制執行をする

和解・判決によっても相手が支払いをしない場合には、強制執行を行います。なお、強制執行をするためには、以下のような債務名義が必要となります。執行認諾文言付公正証書以外は、裁判所が関与する書類となります。

・確定判決

・仮執行宣言付判決

・和解調書

・調停調書

・仮執行宣言付支払督促

・執行認諾文言付公正証書

売買契約書・誓約書の証拠能力

売買契約書・誓約書には証拠能力があるのでしょうか。

証拠能力とは、民事訴訟になったときに証拠として利用できる資格のことをいいます。証拠能力があるということは証拠として採用できることを意味します。

売買契約書の証拠能力

売買契約書は民事訴訟になった際に証拠として利用ができるので、証拠能力があります。

相手に対して契約違反を主張して損害賠償を求める場合には、原告として証明責任があり、証拠による証明が欠かせません。また、請求される側としても、契約に違反がないことを主張するための証拠とすることもできます。たとえば、一定の請求を求められているものの、それに応じる義務はないことを契約書を証拠とする場合が考えられます。

誓約書の証拠能力

誓約書も、民事訴訟になった際に証拠として利用することができるので、同様に証拠能力があります。

誓約内容に違反していることを主張して損害賠償などを求めるためには証拠が必要で、誓約書はその証拠とすることができます。

契約書・誓約書を作成する場合の注意

契約書・誓約書を作成する場合の注意点には次のものが挙げられます。

内容は明確に記載する

契約書・誓約書に記載する内容は明確に記載しましょう。

不明確な内容の記載をしていると、損害賠償などの具体的義務の発生について疑問が残ってしまうことがあります。その結果、当事者間で争いになり解決に時間がかかるだけではなく、裁判になった際にも契約書があっても請求が認められないことがあるので注意が必要です。

強行法規に違反していないかなど法的なチェックも欠かさない

契約書・誓約書の内容が強行法規に違反していないかなど、法的なチェックも欠かさないようにしましょう。

契約書・誓約書の内容が強行法規に違反する場合、たとえ契約書があってもその効力は認められないのは上述の通りです。そのため、契約書や誓約書を作成する場合には、強行法規に違反する内容はないか、法的なチェックをしっかり行いましょう。

さいごに|契約書・誓約書を作成する場合には専門家に相談

本記事では、契約書・誓約書について解説しました。

契約書・誓約書はその内容を相手に強制することができ、裁判で証拠となるものです。しかし、その内容が不明確であったり法令に違反するものである場合には、その効力が認められず意味の無いものになってしまいます。

契約書・誓約書を作成する場合には、専門家に相談することをおすすめします。