再生可能エネルギーの拡大にあわせて、電気を一時的に蓄えて需給変動を吸収する「系統用蓄電池(BESS)」への投資が急速に広がっています。電力市場での裁定取引や需給調整市場・容量市場からの収益を見込み、太陽光に取り組んできた事業者だけでなく、投資ファンドや異業種からの参入も相次いでいます。ところが、いざ用地を確保して事業化に動き出すと、多くの事業者が「土地の許認可」で足を止めます。系統用蓄電池は複数の法律が重なり合う設備であり、しかもここ数年、その取扱いを左右する行政の判断が立て続けに示されました。本コラムでは、契約書作成を専門とする行政書士の視点から、設置に伴う土地関係の許認可を横断的に整理し、最後に契約実務との結び付きまで解説します。
1.電気事業法における位置づけ――すべての出発点
まず押さえておきたいのが、系統用蓄電池の電気事業法上の扱いです。ここが後述する都市計画法の判断に直結します。従来、蓄電池は発電所や変電所を構成する付随的な設備という整理にとどまり、単独で系統に直接つなぐ形態の位置づけは曖昧でした。そこで令和4年の電気事業法改正により、令和5年4月から、出力1万kW以上の系統用蓄電池から放電する事業が「発電事業」として明確に位置づけられました(同法第2条第1項第14号の改正で、放電が発電と同列に整理されています)。発電事業に該当すれば経済産業大臣への届出が必要となり、工事計画の届出や電気主任技術者の選任といった保安規制も及びます。放電が制度上「発電」と並ぶものになった――この一点が、次に述べる開発許可の要否を分ける分水嶺です。
2.最初の分岐点――都市計画法の開発許可
開発許可の対象はあくまで「開発行為」、すなわち建築物の建築または特定工作物の建設を目的とした土地の区画形質の変更です。既存の平坦な土地に機器を据え置くだけで造成を伴わなければ、そもそも開発行為に当たらず、許可が不要という結論もあり得ます。まずは計画が造成を伴うかどうかの見極めが出発点になります。
そのうえで見過ごせないのが、令和7年4月8日に国土交通省が発出した技術的助言(国都計第7号)です。ここでは、系統用蓄電池のうち、電気事業(小売電気事業と特定卸供給事業を除く)の用に供する電気工作物に該当しないものであって、都市計画法施行令第1条第1項第3号に定める危険物を含有するものは、危険物の貯蔵に供する工作物として、同法第4条第11項の「第一種特定工作物」に該当し得ると整理されました。リチウムイオン電池が引火性の電解液を内部に抱えていることが、この「危険物」に結び付いています。
裏を返せば、発電事業をはじめとする電気事業(小売・特定卸供給を除く)の用に供する電気工作物に該当する蓄電池は、公益上必要な工作物として扱われる余地があり、開発許可の枠組みから外れ得ます。第1章で確認した位置づけがここで効いてくるのです。「系統用蓄電池は開発許可が不要になった」という説明も見かけますが、正確ではありません。一定の要件を満たすものが除外され得るにとどまり、要件を欠けば第一種特定工作物として規制の対象に戻ります。
第一種特定工作物に該当する場合、市街化区域ではおおむね1,000平方メートル以上の開発行為で許可が必要となり、市街化調整区域では規模を問わず許可が求められ得ます。調整区域では立地基準(同法第34条)も満たさねばならず、系統用蓄電池については同条第14号や施行令第36条第1項第3号ホの運用が示されています。さらに、コンテナ型の蓄電池を土地に自立させて積み重ねる形態は「建築物」に該当する場合があり、そのときは建築物としての開発許可や、調整区域での建築制限(同法第43条)まで視野に入れる必要があります。
3.農地に置く場合――農地法と農振法
農地は原則として農業以外に使えないため、蓄電池の設置には農地転用が避けられません。自ら転用するなら農地法第4条、転用目的で土地を取得・賃借するなら第5条の許可が必要で、市街化区域内なら届出で足りますが、それ以外の区域では都道府県知事等の許可を要します。
実務上の落とし穴が、農業振興地域内の「農用地区域内農地」、いわゆる青地です。青地は原則として転用できず、まず農業振興地域整備計画の変更により農用地区域から除外する「農振除外」を経る必要があります。この手続きは受付時期が年に数回に限られ、審査も厳格で、半年から一年以上を要することも珍しくありません。加えて農地は営農条件に応じて第1種・甲種・第2種・第3種などに区分され、条件の良い農地ほど原則不許可に傾き、市街地に近い農地ほど転用しやすくなります。用地選定の段階で地目と農地区分を確認しておくことが、スケジュールを守る前提です。
4.森林・造成・傾斜地――森林法などの規制
山林を切り開いて設置する場合は、森林法の林地開発許可が関係します。注意したいのが面積基準の違いです。太陽光発電設備の設置を目的とする開発は令和5年4月から0.5ヘクタール超で許可対象となりましたが、これは太陽光を対象とした基準にすぎません。蓄電池単独の設置は原則としてこれに当たらず、従来どおり1ヘクタール超が基準になると考えられます。ただし太陽光と一体で開発する場合は、一体性の判断により0.5ヘクタールの基準が及ぶ可能性があり、計画の切り分けには慎重を期すべきです。保安林であれば、そもそも指定の解除が容易でなく、別枠の検討が必要です。
土地の造成を伴うなら、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の規制区域内における許可も見落とせません。切土・盛土や土石の堆積が一定規模に及ぶ場合、都道府県知事等の許可が求められます。急傾斜地崩壊危険区域に掛かる土地では、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づく制限も加わります。どの区域指定が土地に及んでいるかを事前に調べることが第一歩です。
5.安全に関わる許認可――消防法
系統用蓄電池に多用されるリチウムイオン電池は、内部の電解液に引火性の液体を含むため、火災予防上の規制対象になります。令和6年1月施行の改正では、蓄電池設備を規制する基準がそれまでの「4,800Ah・セル」から蓄電容量(kWh)へと改められ、市町村の火災予防条例(例)では、蓄電容量が10kWhを超えるものが規制対象、20kWhを超えるものが設置届出の対象と整理されました。系統用蓄電池は数百kWhから数MWh規模に及ぶため、当然に届出の対象になると考えておくべきです。
さらに規模が大きくなると、電解液の総量が危険物の指定数量に達し、消防法上の危険物施設(一般取扱所や屋内貯蔵所など)としての基準が適用される場合があります。指定数量に満たなくても、少量危険物または指定可燃物として市町村の条例による規制を受けます。電解液の含有量は製品仕様により異なるため、メーカーに確認したうえで、早い段階から所轄消防署の予防課と事前協議を行うことが欠かせません。
6.許認可と契約書は、一体で設計する
ここまでの許認可は単体で完結するものではなく、用地を確保する契約と切り離せません。契約書作成を専門とする立場から、重要な視点を三つ挙げます。
第一に、土地を賃借して設置する場合、蓄電池設備が「建物」に当たるかどうかで、適用される借地の枠組みが変わります。建物所有を目的とする賃借であれば借地借家法が適用され、事業用定期借地権(同法第23条)などにより長期の存続を確保できます。一方、建物に当たらない工作物にとどまる場合は借地借家法の保護が及ばず、民法上の賃貸借として当事者の合意に委ねられる部分が大きくなります。20年前後の長期事業では、この差が継続性を左右します。設備が建築物に該当するかという都市計画法上の論点は、実は契約の枠組み選択とも直結しているのです。
第二に、許認可の取得を契約の効力に結び付けることです。開発許可、農地転用許可、系統連系の承諾といった前提が得られなければ契約の効力が生じない、あるいは無条件で解除できるよう、停止条件や解除条件を明確に定めます。特に農地では、農地法第5条の許可を停止条件とし、許可前は権利変動の効力が生じないことを踏まえた組み立てが不可欠です。
第三に、事業の出口と承継への備えです。契約終了時の設備収去と原状回復(撤去費用の負担や危険物の適正処理を含む)、中途解約の条件、事業譲渡やSPC・信託への地位承継、プロジェクトファイナンスに伴う担保設定、固定資産税や償却資産税の負担、騒音や離隔に関する近隣対応まで、長期運用を前提とした条項を過不足なく盛り込む必要があります。
7.まとめ
系統用蓄電池の用地に関する許認可は、電気事業法上の位置づけを起点に、都市計画法の開発許可、農地法・農振法、森林法や盛土規制法、そして消防法へと連なる多層的な構造をとります。とりわけ令和7年の国土交通省の技術的助言により、一定の蓄電池が第一種特定工作物として開発許可の対象となり得ることが明確になり、用地選定の初期段階での見極めが以前にも増して重要になりました。そしてこれらの許認可は、用地確保のための契約と表裏一体です。どの土地に、どの枠組みで権利を確保し、許可の見通しをどう契約に織り込むか。この設計を誤れば、許可が下りても事業が成り立たない、あるいは許可の遅れが契約リスクとして跳ね返りかねません。
当事務所は、土地活用に関わる許認可と契約書作成の双方を専門としております。系統用蓄電池の用地に関する許認可の見通しから、それを踏まえた賃貸借契約・売買契約の設計まで一体でご相談いただけます。用地選定の段階でお声掛けいただくことで、後戻りのない形で事業化を進められます。設置をご検討の際は、ぜひお早めにご相談ください。

