マイホームの購入にあたって、夫婦で協力して資金を出し合ったり、親や祖父母から援助を受けたりすることは、めずらしくありません。家族のことだからと、口約束だけで済ませてしまいがちですが、ここに思わぬ落とし穴があります。誰がいくら出したのかを書面に残しておかないと、将来の相続や離婚の際に、家族の間で深刻な争いを招きかねないのです。本コラムでは、契約書をはじめとする書面作成を専門とする立場から、家族間で住宅購入費用を出し合う場合に、合意書へ何を残しておくべきかを整理します。

なぜ「書面」が必要なのか

 家族間のお金のやり取りは、信頼関係のうえに成り立っているため、わざわざ契約書を作るのは水くさいと感じる方も多いでしょう。しかし、書面がないことで困る場面は、むしろ家族だからこそ起こります。

 第一に、相続の場面です。親が資金を援助した後に亡くなると、その援助が返す必要のないものだったのか、貸したお金だったのかをめぐって、きょうだい間で意見が割れることがあります。援助を受けていない他のきょうだいから見れば、不公平に映るからです。親からの生前の援助は、相続の際に特別受益として遺産分割の中で考慮されることもあり、何も記録がないと、その有無や金額をめぐって争いが長引きます。第二に、離婚の場面です。夫婦で出し合って購入した家について、それぞれがいくら負担したのかが曖昧だと、財産分与の協議が難航します。とりわけ、一方の親からの援助が入っている場合には、その分を夫婦共有の財産とみるのか、援助を受けた側の個人の財産とみるのかで、鋭く対立しがちです。これらの争いは、あらかじめ書面を残しておくことで、その多くを防ぐことができます。

最も重要なのは「出資割合と持分を一致させる」こと

 家族で住宅を購入するとき、まず注意したいのが、実際に出したお金の割合(出資割合)と、登記される共有持分の割合とを、一致させることです。不動産を複数の人で購入すると、その所有権は、それぞれの持分という形で共有になります。この持分は、本来、誰がどれだけ費用を負担したかに応じて決まるべきものです。

 たとえば、四千万円の住宅を、夫が三千万円、妻が一千万円を負担して購入したのであれば、登記上の持分も、夫が四分の三、妻が四分の一とするのが、負担の実態に沿った形です。ところが、負担はこのとおりなのに、持分を安易に夫婦で二分の一ずつと登記してしまうと、実際の負担と登記された権利とが食い違ってしまいます。この食い違いは、後に家を売却して代金を分けるときや、離婚で財産を清算するとき、あるいは相続が起きたときに、「本当は誰がどれだけの権利を持っているのか」という争いの火種になります。

 そこで、合意書には、誰がいくらを負担したのかを正確に記録し、それに見合った持分で登記することを前提として定めておくことが大切になります。負担と権利の対応をはっきりさせておくことが、家族の間の認識のずれを防ぐ第一歩です。

「贈与」「貸付け」「共有」を区別して書き残す

 家族から受けたお金が、法的にどのような性質のものなのかを、合意書の中ではっきりさせておくことも重要です。出し合ったお金は、大きく分けて、返す必要のない援助、将来返すことを前提とした貸付け、そして共有者として持分を持つための出資のいずれかに整理できます。性質によって、後々の権利関係が大きく変わってきます。

 返す必要のない援助として受け取るのであれば、その旨を明確にし、援助を受けた人が単独でその分の権利を持つのか、共有持分に反映するのかを定めます。貸付けとするのであれば、金銭消費貸借契約として、返済の期限や方法、利息の有無などを具体的に定めておく必要があります。ここで注意したいのは、親子間の貸付けであっても、「出世払い」や「あるとき払い」のように、返すあてのない曖昧な約束にしてしまうと、後になって、それが本当に貸し借りだったのか、それとも返す必要のない援助だったのかが分からなくなり、相続の際などに争いのもとになるという点です。返済の実態が伴うよう、現実的な条件を定め、実際に返済の記録を残していくことが欠かせません。共有のための出資とするのであれば、前述のとおり、出資割合に応じた持分を登記することになります。

住宅ローンがある場合の負担割合

 資金の一部を住宅ローンでまかなう場合には、負担割合の考え方に、もう一段の注意が必要です。頭金を誰がいくら出したかだけでなく、ローンを誰の名義で組み、実際に誰が返済していくのかまで含めて、全体の負担割合をとらえる必要があるからです。ローンの名義人が将来にわたって返済していく分も、その人の負担として、持分に反映されるのが筋です。

 夫婦の一方が単独でローンを組む場合と、二人でローンを分担する場合とでは、適切な持分の割り振りも変わってきます。頭金の拠出と、ローンの名義・返済の負担を、合意書の中で整理しておくことで、長い返済期間の途中で認識がずれてしまう事態を避けられます。

合意書に盛り込みたい主な事項

 以上を踏まえると、家族間で住宅購入費用を出し合う場合の合意書には、おおむね次のような事項を盛り込んでおくとよいでしょう。まず、購入する住宅を特定したうえで、誰がいくらを、どのような性質(援助・貸付け・出資)で負担するのかを明記します。次に、それに応じた共有持分をどのように登記するのかを定めます。住宅ローンがある場合には、その名義と返済の負担も明らかにします。貸付けがある場合には、その返済条件を具体的に記します。そして、将来、売却したときの代金の分け方や、一方が持分を手放す場合の取扱い、当事者に相続が生じた場合の考え方など、先々を見据えた取り決めも、可能な範囲で整理しておくと安心です。これらを書面として残しておくことが、家族の信頼関係を、かえって長く守ることにつながります。

まとめ

 家族間で住宅購入費用を出し合うことは、温かい支え合いである一方、何も書面に残さなければ、相続や離婚の場面で、思わぬ火種となりかねません。とりわけ、出資割合と登記持分を一致させること、そして出し合ったお金の性質を、返す必要のない援助・貸付け・共有のための出資のいずれかに明確に区別することが、要になります。

 当事務所は、契約書をはじめとする書面作成を専門とする行政書士事務所として、家族間での住宅購入資金に関する合意書や、金銭消費貸借契約書の作成を承っております。

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