夫の浮気が発覚したとき、離婚まではまだ考えていないけれど、このまま何もなかったことにはできない――そうしたお気持ちから、夫婦の間で誓約書を取り交わしたいと考える方は少なくありません。誓約書は、二度と同じことを繰り返さないという約束を形に残し、万一のときの備えとする、有効な手段です。もっとも、感情のままに作ってしまうと、肝心なところが抜け落ちていたり、逆に効力が認められない内容になっていたりします。本コラムでは、契約書をはじめとする書面作成を専門とする立場から、夫の浮気が発覚した後の夫婦間の誓約書に、入れておきたい10の項目を整理します。

はじめに――今、夫婦間の誓約書は作りやすくなっている

これまで、夫婦の間で結んだ契約は、婚姻中であればいつでも取り消すことができるという規定が、民法に置かれていました。そのため、夫婦間の誓約書は効力が不安定だと指摘されることがありました。しかし、この夫婦間の契約取消権の規定は、令和六年の民法改正によって削除され、令和八年四月一日から施行されています。これにより、夫婦間で取り交わした誓約書が、婚姻中であることを理由に一方的に取り消される心配はなくなり、以前よりも安定した約束として機能するようになりました。だからこそ、どのような内容を盛り込むかが、これまで以上に重要になっています。

入れておきたい10の項目

第一に、不貞の事実の確認です。 いつ、誰と、どのような関係があったのか、本人がその事実を認めることを、まず明記します。後になって「そんな事実はなかった」と言わせないための、すべての土台となる部分です。本人が事実を認めた書面そのものが、将来、慰謝料の請求や離婚の協議に進んだ際の、有力な証拠にもなります。

第二に、不貞相手との関係の解消です。 相手との交際を完全に終わらせること、そして今後は一切連絡を取らず、会わないことを明確に約束させます。口頭でのあいまいな約束ではなく、書面で明確にしておくことで、再発を防ぐうえで最も中心となる条項になります。

第三に、再発防止と誠実義務の誓約です。 今後、配偶者として誠実に行動し、二度と不貞をしないことを誓う内容です。抽象的になりがちな部分ですが、夫婦が再出発するうえでの基本的な約束として意味を持ちます。あわせて、関係の修復に向けて具体的に取り組むこと、たとえば連絡や帰宅の状況を一定の範囲で共有するといった約束を、無理のない形で加えることも考えられます。

第四に、違反した場合の違約金の定めです。 約束を破って再び不貞に及んだ場合に、一定の金額を支払うという取り決めです。ただし、金額があまりに高額にすぎると、公序良俗に反するものとして、その全部または一部が無効と判断されるおそれがあります。相当な範囲にとどめることが肝心です。

第五に、今回の件についての慰謝料や解決金の取り決めです。 すでに生じた精神的な苦痛に対する償いとして、金額、支払の時期、方法を定めます。一括か分割か、分割であれば期限をどうするのか、支払が遅れた場合の扱いまで、具体的に記しておきます。金額は、不貞の期間や経緯といった事情に照らして、相当な範囲で定めることが現実的です。

第六に、約束に違反したときは離婚に応じる旨です。 再発した場合には、相手が離婚の請求に応じること、その際に親権や財産について一定の不利益を受け入れることを定めておきます。約束を破れば相応の結果が伴うと明確にしておくことが、誓約そのものの実効性を支えます。

第七に、将来離婚に至った場合の条件です。 財産分与や慰謝料について、あらかじめの考え方を示しておくものです。ただし、離婚に関する取り決めは、実際に離婚する時点の事情によって見直される余地があり、この誓約書だけで将来を完全に縛れるわけではない点には、留意が必要です。それでも、当事者の当初の意向を書き残しておくこと自体に、後の話し合いの出発点としての意味があります。

第八に、子どもに関する事項です。 離婚に至った場合の親権や養育費、面会交流についての考え方を記します。もっとも、これらは子どもの利益を最優先に判断されるべきもので、その時々の状況によって変わり得るため、確定的な取り決めとしてではなく、現時点での方針として位置づけるのが適切です。

第九に、不貞相手への対応との関係です。 不貞相手に対して慰謝料を請求する場合との二重取りにならないよう、夫から受け取る金銭と、相手から受け取る金銭との関係を整理しておきます。すでに相手と示談している場合には、その内容との食い違いがないかも確認します。不貞は夫と相手の双方の責任によるものですが、受け取れる慰謝料の総額には一定の限度があるためです。

第十に、公正証書にするかどうかです。公正証書によって強制執行まで確保できるのは金銭の支払いに関する部分であり、接触しないことなどの約束そのものに直ちに執行力が及ぶわけではない点は、理解しておく必要があります。

作成にあたって注意したいこと

これらの項目を盛り込むうえで、心に留めておきたい点がいくつかあります。まず、約束の内容が、相手の行動を過度に縛るものにならないようにすることです。たとえば、交友関係や行動のすべてを細かく制限するような条項は、個人の自由を不当に奪うものとして、効力が認められないことがあります。再発防止という目的に照らして、必要かつ相当な範囲にとどめることが大切です。

また、金銭の支払いを定める場合には、相手が実際に支払える現実的な内容にしておくことも重要です。履行できない約束は、結局は守られず、紛争を蒸し返すことになりかねません。感情が高ぶっている時期だからこそ、冷静で実行可能な内容に整えることが、かえって再出発の支えになります。

まとめ

夫の浮気が発覚した後の夫婦間の誓約書は、事実の確認から、関係の解消、再発防止、違反時の取り決め、そして金銭の支払いの確保まで、押さえるべき項目が多岐にわたります。民法改正によって夫婦間の誓約書は取り消されにくくなり、その分、内容をどう作り込むかが結果を左右します。一方で、過度な制限や高額にすぎる違約金は効力を否定されかねず、子どもに関する事項には特有の配慮が必要です。

当事務所は、契約書をはじめとする書面作成を専門とする行政書士事務所として、夫婦間の誓約書や示談書の作成を承っております。おひとりで抱え込まず、まずはお気持ちの整理とあわせて、ぜひ一度ご相談ください。

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