使っていない土地を、資材置き場やヤード、駐車場として貸したい――。遊休地の活用として、こうしたご相談は少なくありません。建物を建てて貸すわけではないため、一見すると手軽に思えます。しかし、土地を資材置き場などで貸す契約には、通常の建物賃貸とは異なる特有の注意点があり、契約書の作り込みを誤ると、後々の明渡しや原状回復をめぐって深刻なトラブルを招きかねません。本コラムでは、契約書作成を専門とする立場から、土地を資材置き場等として貸す際に押さえておくべきポイントを整理します。
最大の勘所は「借地借家法が適用されない」こと
まず理解しておきたいのが、資材置き場としての土地の賃貸借には、借地借家法が適用されないという点です。借地借家法は、建物の所有を目的とする土地の賃借権などを手厚く保護する法律です。資材置き場や駐車場のように、建物を建てることを目的としない土地の貸し借りは、その対象外となり、民法の賃貸借の規定によることになります。
この違いは小さくありません。借地借家法が適用される場合には、契約期間が満了しても、正当な事由がなければ更新を拒めず、貸主が土地を取り戻すのは容易ではありません。これに対し、資材置き場としての賃貸借であれば、契約で定めた期間の満了によって終了させやすく、貸主にとってはコントロールしやすい面があります。
もっとも、民法上の賃貸借にも独自のルールがあります。契約期間の上限は五十年とされ、期間が満了すれば原則として契約は終了し、更新するかどうかは当事者の合意にゆだねられます。逆に、期間を定めなかった場合には、各当事者がいつでも解約を申し入れることができ、土地の賃貸借では、解約の申入れから一年を経て契約が終了します。安定して長く貸したいのか、必要なときに返してもらいたいのかを見据えて、契約期間や更新、中途解約の条件を意図的に設計しておくことが大切です。
ただし、ここに落とし穴があります。もし借主が土地の上にプレハブ事務所や倉庫といった建物を建ててしまうと、その契約が「建物の所有を目的とするもの」と評価され、借地借家法が適用されるおそれが生じます。そうなれば、当初の想定に反して、明渡しが極めて困難になりかねません。これを防ぐためにも、契約書では、使用目的を資材置き場に限定し、建物その他の定着物を建築しないことを、明確に定めておく必要があります。
使用目的と禁止事項を具体的に定める
土地を資材置き場として貸す際に最も警戒すべきなのが、土地そのものが汚されてしまうリスクです。とりわけ、産業廃棄物の保管や不法投棄、有害物質による土壌汚染は、深刻な事態を招きます。
これらは、単に借主の問題にとどまりません。廃棄物が不法に投棄されたり、土壌が汚染されたりすれば、土地の所有者である貸主自身が、撤去や浄化の責任を問われる場面が生じ得ます。土壌汚染対策法のもとでは、土地の所有者等が調査や対策の負担を負うこともあります。そのため契約書では、廃棄物の持ち込みや投棄、土壌を汚染するおそれのある行為を明確に禁止し、違反があった場合の責任の所在を定めておくことが欠かせません。
あわせて、危険物の取扱いや火気の管理、騒音・粉じん・振動による近隣への迷惑行為の禁止、そして貸主に無断で第三者へ土地を転貸したり賃借権を譲渡したりすることの禁止も、盛り込んでおくべき事項です。無断の転貸や譲渡は、民法上も契約を解除する理由となり得ますが、契約書に明記しておくことで、対応がより確実になります。土地が農地に隣接している場合などは、隣接地や周辺への影響にも配慮を求める条項を設けておくと安心です。また、現地に管理者や連絡先を示す表示板を設置しておくことも、不法投棄やトラブルが起きた際の対応や、近隣とのやり取りを円滑にするうえで役立ちます。
原状回復と「残置物」への備え
契約終了時のトラブルで最も多いのが、原状回復をめぐるものです。資材置き場として貸した土地は、契約が終われば、資材を撤去し、更地に近い状態に戻して返してもらうのが原則です。舗装やフェンス、簡易な構築物などを借主が設けた場合に、それらを撤去するのか残すのか、費用は誰が負担するのかを、あらかじめ契約書で明確にしておく必要があります。
とりわけ注意したいのが、借主が資材を置いたまま姿を消してしまうケースです。連絡が取れなくなったり、賃料の滞納が続いたりした場合に、残された資材や廃棄物を貸主が勝手に処分すると、逆に損害賠償を求められるおそれがあります。そこで、一定の条件のもとで貸主が残置物を撤去・処分できる権利や、その費用の負担、残置物の所有権の取扱いについて、契約書で定めておくことが有効です。あわせて、こうした費用や未払賃料に充てるための保証金を預かっておくことも、実務上の備えとなります。
土地の種類と許認可を確認する
貸そうとしている土地が、法令上どのような扱いを受けるのかの確認も欠かせません。もしその土地が農地であれば、資材置き場として使うには、農地を農地以外の用途に転用する農地法上の許可(市街化区域内であれば届出)が必要になります。無許可のまま転用すれば、原状回復命令などの対象になり得ます。
また、市街化調整区域では開発行為に制限があり、土地を造成して整備する場合には、盛土規制法などに基づく許可が必要になることもあります。地目や都市計画上の区域区分を確認し、必要な手続を怠らないことが、安全に土地を貸すための前提となります。契約書のなかで、必要な許認可の取得を貸主・借主のどちらが担うのかを明らかにしておくと、後の行き違いを防げます。
賃料と税務の留意点
賃料の設定や改定、滞納が生じたときの対応も、契約書で定めておくべき基本的な事項です。あわせて、税務上の扱いにも注意が必要です。土地の貸付けは、消費税の面では原則として非課税とされています。しかし、地面を舗装したり、フェンスや設備を設けたりして、施設として整備したうえで貸す場合には、施設の貸付けとして消費税の課税対象となることがあります。更地のまま貸すのか、整備して貸すのかによって扱いが変わり得る点は、押さえておきたいところです。また、住宅の敷地ではなくなることで、土地の固定資産税の評価や負担が変わる場合もあります。
まとめ
土地を資材置き場等として貸す契約は、建物を伴わないぶん手軽に見えますが、借地借家法が適用されないという法的な特徴のうえに、土壌汚染や残置物、原状回復、許認可といった、土地ならではのリスクが積み重なっています。市販のひな形をそのまま用いるだけでは、これらのリスクを取りこぼしかねません。とりわけ、使用目的の限定、廃棄物・土壌汚染の禁止、そして残置物と原状回復の取り決めは、貸主を守るうえで欠かせない条項です。
当事務所は、契約書作成を専門とする行政書士事務所として、資材置き場をはじめとする土地の賃貸借契約書の作成・点検を承っております。大切な土地を安心して活用いただくために、契約条件を固める前の段階で、ぜひ一度ご相談ください。

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